認知症の予防をはじめ、親子の会話や人生の振り返りにも活用できる書籍「もくもくワクワク人生日記」をご紹介します。
「回想法」に着目
認知症の療法のひとつに、「回想法」というのがあるそうです。
回想法とは、昔の懐かしい写真や音楽、昔使っていた馴染み深い家庭用品などを見たり、触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合う一種の心理療法です。1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱し、認知症の方へのアプロ―チとして注目されています。
引用元:https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/kaisou.html
この「回想法」に着目して刊行されたのが、「もくもくワクワク人生日記」です。
執筆者は、神経内科医の渡辺正樹さん。
タイトルの「もくもくワクワク」というのは、大脳辺縁系に属す海馬と、意欲を高める前頭葉を活性化させるキーワード。
付属の解説書によると、無心で運動や塗り絵などの同じ作業を「もくもく」とこなすことは、脳(特に大脳辺縁系)のストレスを減らして神経細胞を守り、課題や目標をやり遂げたり、褒めてもらったりして「ワクワク」すれば、脳内に意欲や気力を高めるホルモン「ドパミン」が分泌され、脳の活性化が期待できるのだそうです。
「もくもく」と昔を思い出し、日記を書いてその日を終える達成感で「ワクワク」する。

100枚の質問シートには、過去を回想する様々な質問が書かれていて、それに答えることで、日記となっていきます。

質問シートは、1枚1枚簡単に切り離せるので書きやすいですし、その日の自分の気分や体調に応じて、書きやすいシートを選ぶこともできます。
シート左横には、あらかじめ綴じ穴も開けられているので、書き終わったシートをファイルに綴じれば、立派な自分史のできあがり。
たとえ親御さんご自身での記入ができない場合でも、お子さんが親御さんの話を聞き取って、質問シートに記入するという使い方もできそうだなと思いました。
父も回想法で脳トレしていた。
私の父は年齢が上がるにつれて、忘れっぽくなりました。短時間で同じ話を何度も繰り返すこともありましたし、ほんの2~30分前に食べた食事のメニューを忘れるなんて、しょっちゅうです。
認知症に関する検査はしていませんでしたが、直前の記憶を載せられる棚の大きさが、どんどん小さくなっていたことは確かでしたので、認知症寸前だったのかもしれません。
しかし、過去のできごとの記憶力はすさまじかった。話し好きだったので、若い頃の話をよく聞かされたものです。
父の回想は、どれもやんちゃなものでした。私が産まれる前の話については、真偽は定かではありませんが、臨場感たっぷりで、いつ聞いても内容にブレがなかったので、概ね真実なんだろうなと思えました。
私が小中学生の頃までは、父は家庭内をたびたびかき乱し、人様にかなりご迷惑をおかけしたこともありました。母と私がつらい思いをしているのに、本人は罪の意識ゼロ。
当時のことを悪びれることなく、父は誰にでも堂々と話すので、はらわたが煮えくり返る私。
しかし、昔のことを話す父の表情は、いつもとてもいきいきしてました。
激高しやすく、情緒不安定な時もありましたが、私や老人ホームの若いスタッフとたくさん話すと、父は気持ちが安定するようでした。
とにかく同じ話が多いし、恥ずべき武勇伝を誰にでも話すので、辟易したこともありましたが、「回想」が父の立派な脳トレになっていたんだ、あの時間は無駄じゃなかったんだなって、今は思います。
私にとっても、回想を聞くことで、父のあるがままを受け入れられるようになったと思います。